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お⼝の基礎知識
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Masticatory effect

噛めない子供たちと噛まない現代人

最近、固い物をうまく噛めない子供が増えています。ハンバーグ、オムレツ、カレーにスパゲッティと、子供たちの好物は大抵あまり噛まなくてもよい、軟らかい物ばかりです。当然このような環境で育った子供たちの顎の成長は遅れ、歯の大きさとのアンバランスから歯並びが悪くなります。また噛むことをしないため、顎関節の機能や噛む筋肉の機能も低下していきます。
この機能の低下は、子供だけでなく現代人にとっても深刻な問題です。現代人の噛む回数は、卑弥呼の時代の1/6、鎌倉時代の1/4、さらに昭和10年代の頃と比べても1/2になってしまったそうです。噛む回数が少なくてすむ軟らかい食べ物は、歯に付着しやすく唾液の分泌も少なくなるので、むし歯や歯周病にもかかりやすくなります。結果的に歯を失い、さらに噛みづらくなり、ますます軟らかい食べ物へと偏っていくという悪循環を繰り返します。

噛むことのススメ

噛むことの効用は、以下のようにたくさんありますが、「ひとくち30回」くらい噛むように意識しましょう。

01

消化を助ける

食べ物を歯で細かくかみ砕くと、唾液と混ざって適度に水分が増し、飲み込みやすくなります。さらに唾液には消化酵素のアミラーゼが含まれるため、体内での消化や吸収を促進するという重要な働きをします。噛めば噛むほど唾液の量が増えるので、よく噛んで唾液をたくさん出すことが大切です。

02

強い顎を作る

「噛む」という動作により上下の顎の骨や顔の筋肉の発育を促し、強い顎を作ります。顎が充分に発達していないと、歯が正しい位置に生えず、歯並びにも影響します。

03

口内浄化でむし歯や
歯周病を予防する

食べ物を噛むと唾液が分泌され、噛めば噛むほどその量も多くなります。唾液には浄化作用の他に、口中を常に中性に保とうとする緩衝作用があるため、糖質が分解されてできた酸なども薄めてくれるので、むし歯の予防にもつながります。また、唾液に含まれるパロチンというホルモンは、カルシウムと結合して歯の表面に少しずつ浸透し、強い歯を作る役目を果たします。

04

ストレス解消

よく噛んで食べると、あまり噛まずに飲み込んで食べるよりも満腹感が得られます。これは噛むことにより、ゆっくりとした食事になって緩やかに血糖値が上昇し、脳の満腹中枢も刺激されて満足感を覚えるからです。ゆっくりと時間をかけて食事を楽しめば、それだけで精神が安定し、ストレス解消になるわけです。またよく噛んで食べることで、自然と食欲にストップがかかり、肥満の予防にもつながります。

05

脳に刺激を与える

食べ物をよく噛むと、頭部の骨や筋肉が動いて血液の循環がよくなり、脳神経が刺激されて脳の働きが活発になります。記憶力や集中力が増して学習能力が高まるだけでなく、運動能力や体のさまざまな機能の発達にも影響することが分かってきています。大人にとっても脳の老化を防ぐために,噛むことはとても大切です。