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歯周病
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Periodontal Disease and Diabetes

糖尿病とは?

糖分は本来私たちの体にとっては必要不可欠な物であり、食物の中の糖分は胃や腸で消化・分解・吸収されて、ブドウ糖として血液中に放出されます。
このブドウ糖が膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの働きにより、体内の各細胞に入って体の健康が維持されます。
ところが、インスリンの量が少なかったり、分泌されても上手に働くことができなくなると、血糖が一定の値を超えて高い状態(高血糖)となります。このように血糖値や糖化ヘモグロビン(HbA1c)の値が一定の基準を超えている場合を糖尿病といいます。
実はこの糖尿病と歯周病は共に代表的な生活習慣病ですが、いずれも初期には自覚症状がほとんどないので自分では気づきにくい病気です。近年この両者は密接な相互関係にあることが分かってきました。

歯周病が糖尿病に及ぼす影響は?

歯周病は歯周病菌が出す酵素や毒素に対する免疫反応が起こって、歯肉の腫れや出血が生じる病気ですが、進行すると歯を支えている顎の骨が溶けて、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。歯肉の溝(病的な場合は歯周ポケットという)に歯周病菌が溜まってしまうと免疫細胞である白血球が細菌を退治しに集まってきます。この時白血球が歯周病菌の出す毒素に触れることにより腫瘍壊死因子α(tumor necrosis factor-α, TNF-α)という物質 を放出します。この TNF-αは、血糖値を下げる働きをもつインスリンを作りにくくすることが分かっています。つまり慢性炎症としの歯周病の存在により、血糖値は上昇し、糖尿病のコントロールをますます困難にして、同時に歯周病も進行していくことになります。

糖尿病が歯周病に及ぼす影響は?

歯周ポケット周辺では、歯肉や顎の骨などの歯周組織を破壊しようと攻撃する歯周病菌とそれを何とか修復しようとする働き (免疫力)とのせめぎあいが起こっています。
糖尿病で高血糖状態になると、お口の中では①口が乾燥する②唾液などの糖分濃度が高くなる③歯肉の毛細血管の血流が悪化して細菌に対する抵抗力が低下する④組織の修復力が低下するといった変化が起こります。つまり糖尿病により、お口の中は歯周病菌にとってはとても生息しやすい環境になり、体の方は免疫力を弱められた状態になります。

歯周病の予防・治療のポイントは?

このように糖尿病と歯周病が相互に関連して「負のスパイラル」(図)を形成してしまいますが、
これを断ち切るためにも、歯周病治療が必要になります。

01

プラークコントロール

歯周病は、歯周病菌による組織への攻撃力が、その攻撃を防ぐ抵抗力を上回ったときに発病・進行します。その予防や治療には、歯周病菌の数を減らして攻撃力をそぐことが必要です。歯ブラシによるブラッシングやデンタルフロスや歯間ブラシを使用した毎日のプラークコントロールが大切です。また定期的に歯科医を受診してセルフケアの足りない部分を補うクリーニング(プロフェッショナルケア)を受けるようにしましょう。特に糖尿病治療を行っている場合には、定期的に歯周病検査を行い、歯肉の状態を確認していく必要があります。

02

血糖コントロール

血糖コントロールが良好に維持されることも大切です。きちんと血糖がコントロールされていないと、歯科治療ができない場合があるので注意が必要です。

03

生活習慣の見直し

歯周病と糖尿病は生活習慣病ですので、喫煙や食生活、運動といった生活習慣の見直しも図っていきましょう。